50ccエンジンパワーアップは、ボルトオンで出来ることはやりきったと思うので、ボアアップしてさらにエンジンパワーを求めていきます。
ボアアップキットは各社から出ていますが、以下の理由でキタコ製にしました。
- 「キタコ虎の巻」が出版されている
- キタコ製は82cc(他社製は80cc)
- ボアアップ後のステップアップ用にシリンダーヘッドがある
ただ、デメリットもあり、シリンダーにオイルクーラー用の取り出し口がないので、オイルクーラーを付けるためにはお金がかかる。。。
そのため、ボアアップ後、次のステップアップをしない方は、シリンダーにオイル取り出し口がある武川のボアアップキット(80cc)を選択するのもありだと思います。
ボアアップ手順は、同じなので武川製でもキタコ虎の巻が使えると思います。
ボアアップするにあたり、「エンジンを車体から下ろす方法」、「エンジンを車体から下ろさない方法」の2パターンが選べると思います。
キタコの虎の巻では、「エンジンを車体から下ろす方法」ですが、ここでは「エンジン車体から下ろさない方法」でやります。
作業用は下ろしたほうが圧倒的にやりやすいと思いますが、エンジンを固定したままできるため、ボルトを緩める、締める作業がしっかりできるのがメリットかと思います。また、私の場合は、作業場がコンテナ内で狭いというのもこちらを選択した理由でもあります。
パーツ準備
- キタコライトボアアップキットリンク
- DENSOイリジウムプラグ熱価24(8番相当)リンク
- ヘッドカバーガスケット(ポッシュ製)リンク
- クランクケースカバーガスケット(ポッシュ製)リンク
- エギゾーストマフラーガスケットリンク
- トルクレンチ リンク
- シクネスゲージ リンク
- ラジオペンチ
- ソケットレンチ
- ラチェットレンチ
- ドライバー(プラス、マイナス)
- エンジンオイル(旧G3相当) リンク
- エンジンオイル(シリンダーなど部品取り付け時に塗布用100ccくらい)
- オイルボトル(100均の食用油を入れる容器)
- ゴムハンマー
- スクレーパー リンク
- オイルストーン リンク
- 針金
- ペーパーウエス
- パーツクリーナー
- マーカー(白)リンク
- リューター(クランクケースの補正が必要な場合)(※1)リンク
(※1)リューターは50HZ/60HZがあるので購入時に確認してください。
関東なので50HZ版を購入しています。
事前準備
カムシャフトの取り外しまでは下記記事「ハイカム交換(ヨシムラ)」(※1)を参照して進めていきます。
(※1)「事前準備」 ~ 「純正カム取り外し」まで実施します。
順序は以下となります。
- シート取り外し
- 燃料タンク取り外し
- キャブレター取り外し
- オイル排出
- ジェネレータカバー取り外し
- ヘッドカバー取り外し
- カムスプロケット取り外し
- カムカバー取り外し
- カムシャフト取り外し
マフラー取り外し
シリンダーヘッドはのちに取り外すので、先にマフラーを外しておきます。

シリンダーヘッドとマフラーの間にマフラーガスケットが挟み込んであるので、こちらは新品をとりつけましょう。
再利用すると、たまに排気漏れを起こします。
シリンダーヘッド取り外し
1.カムチェーンテンショナー関連ボルト取り外し
赤丸のボルトを取り外します。

赤丸のテンションボルトは、エンジン内側から押し出すだけで外せます。

2.シリンダーヘッドとシリンダーを繋ぐボルトを外します

3.スタッドボルト取り外し
スタッドボルトを取り外すことにより、バイクからエンジンを下ろさずに腰上(シリンダーベッド、シリンダー)を取り外せるので、この方法で実施します。
赤丸のように、ダブルナットで外していきます。
また、スタッドボルトは、長さが違うので注意しましょう。
具体的には、ギア側の2本とフットブレーキ側の2本で長さが違います。
どこに刺さっていたスタッドボルトかを間違えないように、白色のマーカーなどで番号を書いておくのが良いかと思います。

4.シリンダーベッドを上側に引き抜きます。
抜けにくい場合は、プラスチックハンマーで軽く叩いてみます。
引き抜くとシリンダー、ピストンが見えてきます。

シリンダーヘッドの下側にノックピンが右前、左後に付いているので、失くさないように取っておきます。
ノックピンがついていた箇所も覚えておきましょう。下の写真の赤丸の箇所です。すでにピストンがついた画像となってしまいましたが、「位置のみ」を確認してください。

シリンダー取り外し
1.カムチェーンガイド取り外し
手で上に引き抜けますので、向きを覚えておきます。

2.ヘッドガスケット取り外し(新品に交換)
ボアアップキット付属のガスケットを使用するので、これまで使用していたガスケット(黒色)は不要となります。

3.シリンダー取り外し
シリンダーも上側に引き抜いていきます。このとき、シリンダー下側(ギア側)にロックピンがそれぞれ付いているので、クランクケース内に落とさないように気をつけて引き上げます。


4.シリンダーガスケット取り外し(新品に交換)
こちらもボアアップキット付属のガスケットを使用するので、これまで使用していたガスケットは不要となります(ボロボロに固着している緑色のガスケットです)
ピストン取り外し
最初に、クランクケースに部品やゴミが入らないようにペーパーウエスを詰め込みます。
もし落ちてしまったら、エンジンを車体から外して、逆さにして振ると出てくる時がありますが、出てこないとクランクケースを分解することになり、ボアアップどころではなくなってしまうので、ここは確実にペーパーウエスを詰めておきましょう。
ちなみに私は、クランクケース内にナットを落としてしまい、エンジンを車体から取り外して、逆さにして振って取り出したことあります、、、。油断は禁物です!気を付けましょう!

1.ピストンピン取り外し
ピストンとコンロッドをつないているピストンピンを取り外すと、ピストンとコンロッドを分離できます。
外すためには、先にピストンピンクリップ2つのうち1つを取り外す必要があります。
ラジオペンチでつなぎ目までピストンクリップの空いている部分を少しずつ移動し、ひねるようにして取り外します。
ここはキタコ虎の巻に取り外しのコツが載っているので参考にしてください。

片方のピストンピンクリップが取り外せたら、ピストンピンクリップがまだ付いている側にピストンピンを押し出します。

手で押し出せるかと思いますが、難しい場合は、ドライバーなどの先端にウエスを巻き付け、十分に保護が出来ている状態で押し出しましょう。
くれぐれも無理やり押し出すことはしないようにしましょう。
「手で押し出せない=おかしい」と考えるのがよいです。
ピストンピンを抜き出すと、ピストンが外れます。

シリンダーの仮組み
クランクケースは左右のケースを組み合わせているため、少々ズレている場合があります。
キタコ虎の巻で記載されている「許容範囲を超えてズレている場合」、ズレている箇所をヤスリやリューター等で削り取る必要があります。

最初に削る必要があるかの判断をします。
キタコのシリンダーをクランクケースに差し込んで確認します。
シリンダーの外側(クランクケースと接触する側)にエンジンオイルを塗ります。
注)画像がなかったので純正シリンダーの画像です。

私のエイプは、上記に当てはまらなかったので実施不要でしたが、対象となる場合はしっかりと削り取っておきます。
それでは、実際に仮組みしていきます。
1.ノックピン2個をクランクケース上部のギア側に差し込む(ガスケットは不要です)

2.ボアアップシリンダーをクランクケースの上に配置する。
①シリンダーが入らない⇒×
②クランクケースとシリンダーの外側の周りで、0.5mm以上のクリアランスがない⇒×、
とキタコ虎の巻には記載がありますので、どちらかNGとなった場合はリューターなどで削りとって調整します。
①は差し込めるかどうかなので簡単にわかりますが、②はデジタルノギスでクランクケース周りとボアアップシリンダー周りを計測するとよいと思います。
こちらはキタコ虎の巻も入念に確認してください。
問題がなくなったら仮組みしたシリンダーを外し、ピストンの取り付けに進みます。
ボアアップ用ピストン取り付け
1.ピストンピン取り付け
最初にピンクリップをピストンの片側に取り付けます。
キタコ虎の巻に取り付けのコツがあるので、参考にしてください。
ここは難しかったです、、、。ピンクリップが飛んで紛失しないように注意しましょう。
次に、キタコのピストンとコンロッドを組み合わせ、ピストンピンを差し込みます。
ピストンには向きがあるので、ピストンに「EX」の文字があるほうを「前側」にして仮組します。ピストンピンには、オイルを塗布してから差し込みます。

最後に、ピストンピンをフタするかたちでピストンにピンクリップをはめ込みます。
やはり、ここも難しかったです。ピンクリップを無理やり広げてしまうと使えなくなってしまうので、キタコ虎の巻を参考にしてはめ込みましょう!
2.ピストンリングを取り付け
5つピストンリングがありますので、無理やり引っ張って形状をゆがめないように慎重にとりつけていきます。
また、取り付け順序(上下も区別あり)、取り付けの向き(リングの空いている箇所の指定)もあるので、ボアアップの説明書に従って同じ位置になるようにしましょう。
最初に、ピストンのリングを収める場所にオイルを塗布します。
■取り付け順序
リングにはそれぞれ下記のような名称があります。
ボアアップの説明書(虎の巻にも記載あり)にリングの記載があるので、取り付ける前に確認しておきましょう。
- エクスパンダ(上下の区別なし)
- サイドレール下側(上下の区別なし)
- サイドレール上側(上下の区別なし)
- セカンドリング(刻印マークが上側)
- トップリング(刻印マークが上側)

取り付けの向き(リングの空いている箇所の指定)があるので、付属されている説明書の図に従ってリングの出口が図に合うようにつけていきます。
最初はおおよそで装着し、最後にしっかり合わせます。
カムチェーンテンショナーの取り外し
50ccのシリンダーついていたカムチェーンテンショナー(純正)一式を再利用するため、取り外します
1.取り外す前にカムチェーンテンショナーがシリンダーからどれだけはみ出ているか測っておきます。

シリンダーヘッドの取り付け穴に再度取り付ける際、微妙に合わなかったため、シリンダーヘッドを取り付けては、取り外しと何度か繰り返したため、ここは正確に測っておくと後が楽になりそうです。
2.カムチェーンテンショナーを固定しているナットとボルトを外します。

3.テンショナーアジャストスクリュー+Oリングを取り外します

4.カムチェーンテンショナーをシリンダーの下側から引き抜きます。
引き抜く際に、テンショナースプリングがシリンダーへかかっているので前もって外しておきます。
画像が不鮮明ですみません。。。

カムチェーンテンショナー取り付け
ボアアップシリンダーへカムチェーンテンショナーを取り付けていきます。
1.カムチェーンテンショナーにテンショナースプリングを差し込みシリンダーの下から差し込みます。

2.下から差し込んだらテンショナースプリングをシリンダーの小さい穴へひっかけます。
3.Oリングにはグリースを塗っておき、テンショナーアジャストスクリューを差し込み仮止めします。ナットも一緒に組み付けておきます。

4.取り外し時に計測した長さだけシリンダー上部にカムチェーンテンショナー部分を突き出す形で本締めします。

ボアアップシリンダー側の準備が整ったので、取り付けていきます。
ボアアップシリンダー取り付け
キタコのボアアップ用シリンダーを取り付けていきます。
1.ノックピン取り付け
2つのノックピンをクランク側に取り付けます

2.シリンダーガスケット取り付け
2つのノックピンに合うようにガスケットを取り付けます。

3.シリンダー取り付け
取り付け前にシリンダー内部、外側にエンジンオイルを塗っておきます。

ピストンをシリンダー内に無理やり入れず、少しずつ入れていきます。
少しピストンが入ってきたらカムチェーンを引き出しておきます。

ボアアップシリンダーの組み付けができました。
シリンダーベッド取り付け
1.シリンダーへロックピン取り付け
シリンダーへ2つのロックピンを取り付けます。
2.シリンダーヘッドガスケット取り付け
2つのロックピンに合うようにガスケットも取り付けます。

3.シリンダーヘッド取り付け
シリンダーヘッドをシリンダーヘッドガスケットが取り付けられたシリンダーに取り付けます。
この時、ロックピンはすでにシリンダーに取り付けられている状態なので、それに合わせて取り付けます。
また、カムチェーンもシリンダーヘッド下から内部を通して上部に引き出し、落とさないように針金等で括り付けておきます。
4.シリンダーヘッドとシリンダーをつなぐボルトを取り付け
締め付けトルク:10N・m

5.カムチェーンテンショナー取り付け
あとでカムシャフトを取り付けたのちに調整するので、テンショナーアジャストカム、プレート、プレートを固定するボルトを取り付けておきます。

6.カムチェーンガイド取り付け
シリンダーヘッド上部からカムチェーンガイドを取り付けます。
差し込むかたちです(差し込み位置が分かり易いようにヘッドがない状態の画像にしています)

7.スタッドボルト取り付け
4本のスタッドボルトを取り付けます。
ここもダブルナットで取り付けます(締め付けすぎに注意です)

事後作業
ここからは、事前作業と逆の順で取り付けていくのみであるため、要点以外は作業内容は省略します。
1.マフラー取り付け
マフラーガスケットは新品を使ってマフラーを取り付けます。
2.カムシャフト取り付け
カムシャフトを取り付け後にカムチェーンテンショナーでカムチェーンの張りを調整します。
手順は以下です。
1.①のボルトを緩めます。
2.②のボルトをマイナスドライバーで水平から右側に45度傾けます(写真参照)
3.③のボルトを緩めたのち、再度締めこみます(締め付けトルク:12N・m)
4.②のボルトを水平に戻します。
5.①のボルトを締めこみます(締め付けトルク:10N・m)

■要チェック
フライホイールを向かって左回転させて、異音、引っ掛かり、オイルが回っているか、オイル漏れがないかを確認します。
3.ヘッドカバー取り付け
エンジンオイルはホンダ純正のウルトラG3 10w-30にしました。
4.ジェネレータカバー取り付け
5.キャブレター取り付け
キャブセッティングは、エンジンをかけてから問題あれば変更なので「変更なし」です。
6.エンジンプラグ変更
説明書に従って、7から8番手のプラグに変更しておきます。
7.ガソリンタンク取り付け
ガソリンはハイオクを入れます。
8.シート取り付け
走り出し前のチェック
1.異音チェック
キーオフの状態でキックペダルでクランクを回し、再度異音がないか確認します。
2.オイル漏れチェック
同様にキーオフでキックペダルでクランクを回し、全体的にオイル漏れがないかを確認します。
漏れがあれば、漏れのある個所を修正します。
ボルト、ナットが緩んでないかをチェックしつつ、ほかに問題がみあたらない場合は組付け途中で間違いがあったと判断し、再度原因のある個所のところまで外していき、問題を修正します。
3.ガソリンチェック
圧縮比があがるのでキタコの説明書通り「ハイオクガソリン」が入っていることを確認します。
4.排気漏れチェック
エンジンをかけて排気漏れチェックをします。
また、暖気して異音がないかもチェックします。
5.キャブレターセッティング
自分の場合、キャブセッティングなしで「乗れる状態」でした。
ボアアップ前と同様に12000回転までまわる状態です(ヨシムラカムを装着)
完成
ボアアップしたのち、乗り出した最初の感想は「トルクすごっ」でした!
50cc(正確には49cc)では感じれなかった「トルク」に感動しました!
信号待ちからの発進は余裕で快適です!
坂道の途中からでも加速できてグイグイ登れます!!
そして30km縛りからの開放!!!これが最大の恩恵だと思います。
ボアアップしたことにより、キャブレターセッティングはさらにつめられそうな「余力」がある状態だったので、ボアアップエンジンに慣れながらつめていくことにします。
ただ、エンジンの発熱量が明らかに増えたためか、明らかにエンジン回りの熱気を感じるようになりました。
ボアアップ作業は夏場に行ったので、信号で止まっているとオイルの温度計がどんどんあがり85℃くらいになってしまい、エンジンがストールしてしまうようになりました。
エンジンストールは、キャブレターセッティングの問題かと思い、エアスクリュー、スロージェットなどを変更して様子をみてみましたが、改善に至らず。。。
結果からいうと、オイルクーラーをつけることにより解決しました。
つまり、エンジンストールは、エンジンが高温になりすぎて、オーバーヒートしていたことになります。
オイルクーラー取り付けについても近日書いていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

